BLOG
ブログ

マーケティングに重要なのはコミュニケーションー社員それぞれが、お互いの成長を促しあう日清の環境

2023.04.05
BLOG
日清 白澤勉さん

※本記事は2020年7月2日に公開した記事を再掲したものです。

いつの時代も斬新で目を引く企画や広告が注目される日清食品。そんな日清食品では、マーケティングこそ会社の基礎をつくる、という考え方が浸透しているそうです。

今回は新卒で日清食品に入社し、営業や海外駐在など様々な職種を経て、現在はカップヌードルのブランドマネージャーを担当されている白澤さんに、日清食品のマーケティングについての考え方や、マーケティングをする上で重要視されていることを伺いました。

白澤 勉(しらさわ つとむ)1997年日清食品入社。営業部門、宣伝部、経営戦略部、2011年よりマーケティング部に異動。その後、北アフリカ モロッコにてマーケティング担当として事業立ち上げを経て、2019年1月より現職。「カップヌードル」ブランド全体のマネージメントを行う。

社員それぞれが、お互いの成長を促しあう日清の環境

福田:最初に簡単なご経歴から教えてください。

白澤勉(以下、白澤氏):私は1997年に日清食品に入社し、現在23年目になります。転職経験はなく、ずっと日清食品で仕事をしています。新卒入社してからの最初の4年半は営業職で、企画を含め色々な経験を積みました。

その後2001年に宣伝部に異動し、カップヌードルの「NO BORDERシリーズ」や「FREEDOMシリーズ」などの広告制作に携わったのち、経営戦略部に異動することに。ホールディングス制に会社が移行するタイミングだったので、そこではM&Aに加えてグループの理念づくりなども経験しました。

その後一旦マーケティング部に異動して「どん兵衛」を担当した後、再び経営戦略部へ異動。今度は海外事業立ち上げの仕事に携わり、北アフリカのモロッコで現地調査や新事業立ち上げなどを行い2年弱駐在しました。

モロッコからの帰国後は再びマーケティング部配属となり、日清焼そばU.F.O.のブランドマネージャーを経て、現在はカップヌードルのブランドマネージャーをやらせていただいています。入社してから、さまざまな部署や業務を経験し今に至ります。

福田:なるほど。大学時代、マーケティングを学ばれたことはあったんですか?

白澤氏:いえ、全くありませんでした。ただ、当時から日清食品は広告が非常に目立っていた会社でした。それに私は映像にも興味があったので、学んだことはなくても、いずれはマーケティングや宣伝部には行きたいという意思は持っていたんです。

福田:社内でさまざまな部署の方とコミュニケーションを取りながら、日々仕事されていると思います。一緒に仕事をする方に求めるものは何ですか? どんな視点や感覚を持った人と仕事したいと思いますか?

白澤氏:一緒に仕事して楽しいのは前向きな人ですね。常にポジティブに物事を考える人。

思考がポジティブな人間は周りの人も幸せにして、前向きにさせてくれますから。

思考的には圧倒的にポジティブな人が良いんですが、ポジティブな人間だけを相手にしていくと、コミュニケーションスキルは上がっていかないですよね。

例えば、ネガティブで後ろ向きな人間をどうやったら少しでも前向きにして、自分の仕事に力を貸してもらい、目標に近付けるかを考えることも、スキル的には重要だと思うんです。

マーケターって指針を立てたり、方向性を示したり、やりたいことを強く思ったりということはありますが、スーパースターではないので、全部自分ではできないですよね。いろいろなタイプの人がいる中で、その人たちをしっかりまとめて、みんなのモチベーションを上げて、前向きに動かすことで、仕事はもっと大きくできるはずです。それもマーケターの仕事の1つだと思っているので、人はあまり選ばないようにしています。

「マーケティングが会社の基礎を作る」日清の土壌

福田:ちなみに御社では、宣伝部がマーケティング部にあたるんですか?

白澤氏:ちょっと違いますね。ホールディングス制になったタイミングから、宣伝部がホールディングス、我々マーケティング部は日清食品に帰属しています。

宣伝部がコミュニケーションの制作やその媒体の買い付けを行い、マーケティング部が主にブランドのコンセプトを考えるなど、ブランディングに近い仕事をしていますね。ただ、基本的には宣伝部もマーケティング部も一緒のチームとしてやってます。マーケティング部は1987年からブランドマネージャー制となり、日清食品の即席麺の代表ブランドをそれぞれ持つ形になりました。

全部で10グループあり、その中で我々のグループはカップヌードルブランドを担当しています。ブランドマネージャーがそのブランドの社長として、1つの事業会社を運営するように全てを見なさい、というのが日清のスタンスです。なので、基本的に全てにおいてブランドマネージャーの確認が必要です。

資材や生産や開発、マーケティングからの発信や確認や宣伝、それに関わる社内のいろいろな部署とのコミュニケーションや折衝など、私はカップヌードルに関わる全てに携わっています。最終的にはブランドごとに損益管理や売上管理もやるので、「ブランドとして儲かっていますか?」ということを全てブランドごとに、単品管理で担っている形です。

福田:非常に面白いですね。マーケティングって宣伝寄りのイメージが強いんですが、私自身の認識としては、経営に近いんですね。御社の場合はマーケティング部というより経営に近い部分があって、私の考えと似ているなと感じました。会社としても、マーケティングは経営に近いというご認識なんですか?

白澤氏:全くその通りです。現社長が「マーケティングが会社の基礎を作る」という前提に立っているので、特にここ5〜10年でその認識はより強くなってきました。経営者になるには、日清におけるマーケティングを最低限経験すべきだという話もあります。

福田:素晴らしいですね。

白澤氏:私もマーケティングの考え方は、社会人として必ず持ってなくてはいけない基礎的な考え方だと思うんです。人事だろうが総務だろうが、マーケティング思考があるかないかによって、仕事がガラっと変わると考えているので。

マーケティングはフレームワークや知識だけの話ではなく、どういう趣向で物事を捉えるかという思考や心理学的な部分、自分の気づきや発想などの「マーケティング思考」も、実はとても重要だと思うんですよ。だから極論、その思考さえあれば、どの部署の誰でもマーケターになれると思うんです。

福田:非常に共感します。我々の塾も、エンジニアだろうが営業だろうが、マーケティングのいろいろな視点や考え方を手に入れることで、社会人としての人生がもっと良くなるんじゃないかと考えているので、とても刺さります。

マーケティングに一番重要なのは、コミュニケーション能力

福田:マーケティング部での仕事にあたり、これまでのご経験や知識の中で特に重要だと考えていることや、どのような経験をもとにマーケティングを捉えているのか、もう少し深堀りして聞かせてください。

白澤氏私はマーケティングで最も重要なのは、コミュニケーション能力だと思っているんです。その中でもまずは「人とコミュニケーションして動かす」ことですね。部署のメンバーだけでなく、社員全体や消費者もはじめとする社外も含め、人とどのようにコミュニケーションを取って、物事を動かしていくか。物を動かし、人を動かすことを突き詰めていくのが基本なのかなと思ってます。

相手の立場、心理や消費者に対して、インサイトという言葉がよく使われます。彼らが何を求めて、どんなことに行動のトリガーがあるのかを常に考えるようにしていますね。

私が最初に宣伝部に異動したばかりのとき、自分の実現したい思いがあってもなかなか難しかったのを覚えています。若手がブランドマネージャーを動かすのは相当難しいんです。彼らを説得しなければいけないときは、見せ方や話し方を相当練って提案していました。

この経験を通じて、まず目の前にいる近しい人の意思を探り、動かせない限り、消費者を動かすことは難しいのではないかと考えるようになりました。

福田:なるほど、面白いですね。身近な人を説得できれば、その先にいる多数を説得できるのではと考えたわけですね?

白澤氏:そうですね。さらに表面的な発言と考えている意識、実際の行動との距離感を捉えることも重要です。マーケティングの仕事でグループインタビューをやっても、表面的に出てくる言葉と考えている意識、行動は果たして一致しているのか、非常に思うところがあって。

人間、心理的には良いこと言いたいので、例え調査だとしても「健康を気にしていますか?」と聞くと「気にしています」と答えるし、「環境配慮があるものとないもの、どちらが良いですか?」と聞くと「あるもの」って答える人が多い。でも実際は、全員が環境配慮のある商品を買うわけではないんですよね。

表面的な発言と考えている意識、なぜこの商品を買うのか? という行動との距離感をちゃんと捉えないと、調査をやっても全く意味ないと思っていて。それをどういう風に捉えるか、最近は特に毎日のように考えてます。

福田:なるほど。発言と意識、行動の距離感を正しく捉えて距離を縮めるために、今意識してやってらっしゃることはありますか? あるいはこれからマーケターを目指す若い人たちに向けて、彼らはどう学べば、その距離感を縮められると思いますか?

白澤氏:もちろん答えはないんですが、私が意識してやってることの一つは、例えば新宿の屋外広告でポスターがバーッと並んでいますが、明らかに人が止まる広告とそうでないものがあります。病院の待合室のテレビでCMが流れた時に、人がパッと見るCMもありますよね。

それをしっかり見て、「何でこの人は振り向いたんだろう」「何でこの広告に目が止まるんだろう」と自分なりに理由を考えて分析し、解釈する癖付けは一生懸命してますね。それはある意味、自分の感覚になってくると思うんです。

あと例えば、コミュニケーションでも「なんでこの人、こんな訳わかんないこと言うのかなぁ」ってなる理由をいろいろ考えてみるんですよ。さらに話してみて「それってどういうことなんですか?」と聞いてみると、相手への理解が深まるし、別の言い方や提案もできるようになります。

感情的になって「なんだ、全然分かってくれないな」ではなく、分析して紐解いていくと、いろいろな見方があると分かります。自分なりに冷静に分析していく癖付けをしていくことも大事だと思います。

福田:非常に面白いなと思いました。多くのマーケターと呼ばれる人たちにインタビューしていくと、基本的に皆さん物事を多面的に捉えていて。怒っててもあまりイライラしないとか、なんでそうなんだろう?って考えたりとか、そういう傾向があると感じます。

ー後編「複数の視点を埋め込むマーケティングをー全ての社会人がマーケティング思考を持つことの重要性」に続く

(聞き手、写真:福田正義、執筆:小磯侑、編集:筒井智子)

Share

Avatar photo
この記事を書いた人
鈴木悠介
営業職、アフィリエイター、広告運用者を経て、現在はMERC Educationスタッフとして活動。上辺だけのマーケティングではなく、顧客の心に寄り添ったマーケティングができるよう日々奮闘中。

関連記事